昨年、第一回が開催され、多方面より注目をいただきました、全国の老舗和菓子店の集まる
全国銘菓名産協会を母体とします若手の取り組み「本和菓衆」。
今年は、新たに2社を加えて10月29日より11月の4日まで、昨年同様、日本橋三越様の地下銀座線口にて第二回を開催させていただきました。
佐藤屋は、昨年の第一回におきましては、伝統の乃し梅で培った、寒天を扱う技術を用いた
新作の琥珀糖「十徳(じっとく)」をお出しいたしまして、大変に高評をいただきましたが、反響の大きさに
製造が全く間に合わず、ご迷惑をおかけした反省と、その後の一年間、色々に取り組んできたことを活かしての第二回への続けての参加となりました。
本年は、「お酒と共に楽しんでいただける和菓子」を佐藤屋は一つのテーマとし、やはりこれまで
八代に渡って高めてまいりました「寒天」の技術を活かした菓子をお届けしてこそ、佐藤屋の八代目としての
本筋であろう、と新商品一品を加えた三品をメインに、1週間ご提案をさせていただきました。
上の写真が新作の「うしお」
愛媛は怒和島の一軒の農家さんのレモンとの出会いが生んだ爽やかな菓子になりました。
白い部分は淡雪と申しまして、メレンゲと砂糖、寒天で作ります伝統的な寒天の菓子。
ともすれば甘くなりがちであり、少し敬遠されがちな菓子である様に思えまして、今回はラム酒と
怒和島のレモンの蜜漬を皮ごと加え、甘さと酸味、そしてあと味に残るほのかな渋みまでを含めて
楽しんでいただく菓子に仕上げました。また、より繊細な食感と、日保ちの改善のためには、洋菓子の
技術であるメレンゲの技、特にギモーヴなどに使われるメレンゲの技術を取り入れました。
酒との組み合わせで言えば、微発泡の日本酒、吟醸酒の中でもフルーティな香りのもの、白のワイン
などとマッチするのでは、とご提案をさせていただきました。
二点目は「りぶれ」
初夏の登場以来、大変にご高評をいただいております、レモンと黒糖とラム酒の羊羹。
昨年不思議なご縁で出会って以来、尊敬し親交を持たせていただいておりますwagashi asobiさんの
ドライフルーツの羊羹と同様のラム酒と黒糖の羊羹ですが、佐藤屋スタイルは少し水分が多い感じ。
同じ菓子を作っても、それぞれのイメージで仕上がりが違うと言う点もまた、菓子の面白さ。
こちらも怒和島のレモンを用い、レモンの錦玉の層と黒糖とラム酒の層の二層の棹菓子になっています。
酒との組み合わせでは赤ワイン、ウイスキーやブランデーなど。IPAなどのビールとの相性も良いです。
ブドウなどの果実の渋みがある酒との相性が良さそうに思っています。
三点目は「たまゆら」
佐藤屋の代表商品であります銘菓「乃し梅」を新しい使い方でご提案したい、と思い作った白餡と寒天をクーベルチョコと生クリームに合わせた羊羹とチョコの合いの子ですが、
ショコラティエの方にもご注目をいただけた本格的な生チョコに仕上がっています。
バターを使っていませんので、常温でも溶けず温度帯ごとの硬さの変化も含めて楽しんで
いただける形になっており、ビターなチョコの後味に、さっぱりとした梅の酸味が絶妙にマッチする
一品に仕上がりました。
お酒との組み合わせでは、ブランデーやウイスキーが良いと思いますが、赤ワインとも相性が良く、
日本酒党のお客様からは今回の催事後、熱燗とのマッチングも良いのではとのお言葉も。
もちろんどの品も、お茶との相性も良く、特に紅茶との相性も良いものです。
急須でお茶を、抹茶を点ててと言うのは勿論、和菓子、日本の伝統にのっとっている以上、
目指すところではありますが、現代に生きる方々に、私たちの仕事を知っていただく意味でも
こう言った新たな取り合わせの提案というものは、すそ野を広げるためにも必要ではないかと
思いまして、特に本和菓衆と言う新しい取り組みならではの事、とご提案いたしました。
期間中は、店頭に大部分の時間立ち、お客様に上の様なお勧めの召し上がり方をお伝えいたしました。
お茶に合わせるもの、との先入観のある和菓子です。驚かれる方も多数おられましたが、中でも
毎回私たちの新しい取り組みに興味を持っていただき応援してくださっている方々の、本当にたくさんの
ご来店のおかげを持ちまして、佐藤屋始まって以来の大成功をおさめさせていただきました。
会期終了後も、お取り寄せなどで沢山のご注文をいただいておりますが、何せ毎度お伝えしております
様に、手作りの品々。そして、レモンの農家さんは一軒。作れます量に限りがございますので、お届けまでに
お時間をいただいております。ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解の程を。
9社それぞれが想う、新しい和菓子の形を、それぞれが思う場面に合わせて、それぞれの培って
きた技で表現した第二回本和菓衆。どの店も面白く、その菓子をご紹介したいのですが、私が語るのは
野暮と言う物。facebookの本和菓衆のページや、各社のページなどで調べて、取り寄せて楽しむもまた
一興と言うことで〆させていただきたいと思います。
上の写真の田中さん、松江の彩雲堂の山口さんとの酒の席に端を発し、次々と加わってくれ、
素晴らしい力を発揮していただいた仲間たちに、そしておいでをいただいた沢山のお客様と、いつも
応援してくださる皆様に心からの感謝を申し上げます!
また来年まで精進し、この場所でお披露目をする時には、いったいどんな菓子が出るのかは、正直
自分でもわかっていません。一年間の中での出会いや、刺激を受けての思いつきで生まれる菓子こそ、
山形を自ら楽しみ、人にも楽しんでもらう私の菓子作りの身上。
是非これからもまた、私たちの菓子を楽しんでいただきながら、応援をお願いいたします!
なお、お送りだと時間のかかる菓子も、山形の店においでをいただきますと案外、スムーズに
お求めいただけることがございますが、これは当然。これまでもこれからも、山形の店である事は
絶対にゆらぎません。地元での評価につなげるべくの東京武者修行ですから。