佐藤屋「花びら餅、はじめました。」

山形、佐藤屋の正月の菓子「菱花びら餅」

2019年も残りわずか。
お正月の準備は皆さまいかがでしょうか?
佐藤屋では、26日本日よりお正月の菓子の代表格の一つとなりました
「花びら餅」が店頭に。一足早くお正月の練習ができますよ~

お正月の和菓子、と聞かれますと「花びら餅」との答えが
返ってくる事がしばしばございます
位には、知名度の高いお菓子となりましたこの一品。

餅を円形にのしたもので味噌餡とごぼうをはさんだこの菓子、
ちょっと不思議な取り合わせですが、
いったいなぜにこんな形になったのでしょうか?

菓子のおこりとしてはどうも、明治位になるまで表舞台には
出てまいりません。
その後、茶道が広まっていく過程で、お正月のお家元の
初釜の定番の菓子となり、それを模したそれぞれの地方の
菓子屋が販売するようになって、正月の定番菓子として
広まっていった様でございます。

そもそもは、平安期の宮中にございました「お歯固めの儀」
と言う風習に由来し、白の丸餅に紅色の菱餅を置き、そこに
色々の食べ物をのせて食べていたものが、徐々に簡略化され、
宮中雑煮と呼ばれた白餅と紅餅を重ねたもので食べ物を包んだ形の
ものを食べる様になっていったとのこと。
今も残る宮中の資料の中には、宮中の鏡餅は、白餅を
重ねた上に紅餅を重ね、その上に
ダイダイやエビなどを飾っておられた様で、今の
花びら餅の、白餅に紅を重ねた形の源流と言えそうです。

何故に味噌餡なのか、と言う部分やゴボウの本数などは、
諸説ありますので、何ともここでは言いにくいのですが、
少なくとも一般に、花びら餅の存在が登場するのは明治期の
裏千家での初釜での事であろうと思われます。
それが今尚そのままの形で残っているのであれば、私が
見たことのあるそれは、白餅に紅の丸餅をのせ、細く
切った蜜漬けのゴボウを二本置き、
砂糖蜜で溶いた味噌をしぼり包んだものでした。
一般に出回る花びら餅は味噌餡ですが、初釜でのそれは
味噌ダレとでも言うべきもので、こぼさずに食べるため
には一口でいく必要もありまして、ハレ姿で茶席に
参加される方が、お召し物を汚されるのではないか、と
ドキドキしたのを覚えています。

ともあれ、そうして広まった花びら餅が、日本でも奥地、
東北は山形の佐藤屋まで伝わるには、それ相当の時間も
かかりまして、昭和に入ってから、茶道の先生からの
ご依頼で、似せて作ったのが始まり。
父(七代 松兵衛)の頃には広く山形の席でも、正月の
定番菓子として「花びら餅」を作らせていただくように
なりました。

ちなみに、この花びら餅は、白餅に紅のぼかしで
のしたもので、味噌餡とゴボウ一本を畳んで作る形。
お餅はしっかり目で、ごぼうは柔らかく煮てありますので、
山形風の花びら餅として完成してる感じでございます。

佐藤屋は山形産のごぼうを花びら餅用に仕込みます。

しかしながら、昨今は交通機関も発達し、京都や東京での
家元の初釜にも参加された、と言う先生が増えてきたりも
ありまして、実はここ数年ではございますが、私八代目が
見てまいりました京都風の花びら餅も、ご予約限定では
ございますが、作るようになってございます。
ただし、こちらはゴボウの仕込み(上の写真は切ったところ
ですが、土つきのを洗って選別からスタート)、蜜漬けに
3日、餡を煉って、生地を白と紅、別々にのして、
畳むというすべての作業を一人でもって
いたしますので、数は当然作ることができません
(通常タイプは皆で作るので、ちゃんと数をご用意させて
いただけますのでご安心を)ので、ご予約限定となってしまうのです。

餅粉と米粉を合わせ、蒸し、ついて作る「花びら餅」の生地
山形、佐藤屋の花びら餅の製造。


餅を蒸して、手鍋で火にかけて手早く必死に煉る。冷める前に
麺棒でのして、型抜き。
文字にするとこれだけなのですが、相当の腕力も必要と
されまして、この作業をしてるときには
周りの職人がからかうくらいに必死になっております。
実際周りの目を気にできるくらいなんですから、京都での
修行中に比べたらかわいらしいものに
見えてしまう数なんですけどもね。それくらい京都は
花びら餅の数が凄かった・・・

そんなこんなで歴史も伝統もあり、そして今も変わらず手間の
かかる製法で作られている花びら餅、佐藤屋では本日より
販売開始です(一個300円)。
八代目の作る限定品は、「菱花びら餅」の名前でご予約を
承っておりますので、ご興味がございます方は是非どうぞ!
通常のものとは数段違う、手間かけた分だけある感じの
一品を味わっていただけますよ~ 一個700円もしてしまうけど。

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